column-index > column10.
マイホームビーチ、湘南。 ■はじめに 15年ほど昔の紡木さんの代表作、「ホットロード」。 当時、ホットロードは少女漫画としての域を越え、教室内の会話を飛び出し雑誌、テレビなどで話題となった。 しかしその取りあげられかたはひどかった。 内容そのものよりも、そのシチュエーションの”かっこうよさ”だけが取り上げられる事がたびたびあったからだ。 湘南、かっこいいじゃん。 暴走族、かっこいいじゃん。 そう子供たちに錯覚させたのは、他でもない、大人の社会だった。 集英社とは全く無関係の出版社が、ティーン誌”P”でとりあげた。 私はこの雑誌が当時、嫌いだった。 「和希は私だ&ナイツは俺たちだ」手記、「ホットロードを映画化しよう」・・・。 紡木さんはその雑誌の企画のどれ1つとしても望んでいなかったはずだ。 「この1年、私の名前は勝手に走って いろんな人を争わせたり傷つけたりしてたけど・・・ 描いた事の大きさは 感じる事のすべては どこに行ってみんなに伝えれば!!!」 ローマ字コメントで紡木さんはそう叫んでいた。 愛する人への愛、母親への愛、子供への愛、生徒への愛、親友への愛・・・。 それに気付く事無く、いま目の前に写る物がすべてだと錯覚した青春時代。 そしていつしか気付いた時に感じる、受ける愛、与える愛。 「ホットロード」は、たくさんの愛に気付かせてくれた、私にとって大切な物語。 そしてその舞台としての”湘南”に私はクローズアップしてみたかった。 和希、ハルヤマ、絵里、リチャードさん、トオルさん、宏子さん、ママ、鈴木君・・・ 大好きな主人公たちの思い出の場所を、地図と写真で旅してみたいと思います。 ■ 紡木さんと、“湘南”。 湘南―――。 関東を代表するサーフィンや海水浴のメッカとされ、数多くの歌の詞にもその各地名が登場する「湘南」とは、神奈川県茅ヶ崎市あたりから三浦半島手前までの相模湾に面した沿岸の総称といわれている。 「紡木たく」さんの漫画には海のある土地を舞台とする作品がとても多い。 (波の言葉たち/あの夏が海にいる/湘子/あの人の車で・・・/やさしい手を、持ってる/机をステージに/ホットロード/his love/隆司永遠/純-JUN-) そして今年8月に公開されたばかりの、久々の描きおろしピンナップにもやはり「海」が描かれていた。 また、実在する高校が舞台となっている「瞬きもせず」、この校舎は実際には海に隣接していない。 だが紡木さんはグラウンドの向こうに海を描いている。 実は、海という印象を与えていなくとも、海がまったく描かれていない作品は、 初期作品「新しい友だち」と、東京・原宿を背景にした「うまくいえない」の2作品だけなのだ。 海沿いの土地を舞台にしてない作品ですら、「かなしみのまち」では、峰とあつしが釣りをする場面で。 「これからもずっと」では”あやちゃんキズつけたの俺だから”というシーンの背景に。 「横浜・14才・由子」では、たけしが自分の子供を亡くした事を由子に告白するシーンの背景に。 「みんなで卒業をうたおう」では校舎の背景に、それぞれ海が描かれている。 (「波の言葉たち」・「17の午後」については単行本化されていない為未確認 ) 上記の作品には「海」が描かれているが、その中の大半は湘南各地を舞台とした作品である。 「みんなで卒業をうたおう」35ページ。 校内で3年生だけの卒業ライブ直後、石川なっちゃん先輩の忘れ物である腕時計を主人公が渡しに行くというシーンの背景に、小さなローマ字が書かれている。 さて実は、これも本当の話だよ。 みんな本当にかっこよかった、これよりもっと。 大好きだった。 みなさんも良い卒業 してください・・・。 1985年 卒業ほんとうにおめでとう。 いつか・・・ 湘南の海 で会いましょう・・・♡たく ----------------------------------- 「みんなで卒業をうたおう」という作品が実話であり 卒業後いつかみんなで湘南の海で会いたい、そう紡木さんは書いていた。 神奈川県横浜市の出身である紡木さんの青春時代は、湘南抜きには語れない、 そんなマイホームタウンならぬ、マイホームビーチ、なのだろう。 ■ 2・ホットロードと”湘南” 紡木さんの作品の中で湘南を舞台にしたものは数あれど、私達の印象に強烈な印象を与えた「ホットロード」。 実にリアルな描写で、湘南に住んでいる人なら身近に感じることができる場面がいくつもあるのだろう。 いつか自分の足で湘南を歩いて、このサイトで「ホットロード」フォトギャラリーを作りたいと思っている。 ところで。 紡木さんの作品には、同じ舞台が描かれている場面が複数存在する事に気付く。たとえば、 ■「やさしい手を、もってる」の冒頭のページ。 □「机をステージに」の、P108,P155,P159他多くのページ。 これらはすべて、由比ガ浜(地図B)から稲村ケ崎(地図C)を眺めた景色だと思われる。また、 ■「ホットロード」MC第一巻表紙。 □「his love」の冒頭1ページ目。 この2箇所も同じ場所のようだ。 また、稲村ヶ崎付近(地図C)から江ノ島(地図F)を眺める景色も非常に多く登場する。 春山の働くガソリンスタンドから江ノ島を眺める景色がそれである。 地図CからFを眺める。 春山はGSで働きながら 何度この景色を眺めたのだろう。 写真提供:©湘南お天気相談所 和希の自宅は、小田急江ノ島線「鵠沼海岸駅」(地図K)が最寄の駅であろう。 湘南にはその小田急江ノ島線のほかに、”江ノ電(江ノ島電鉄)”とよばれる私鉄が通っている。 湘南海岸沿いを走り、ドラマや映画・CMなどにたびたび登場する江ノ電。 和希がもし江ノ電を利用するとなれば、「江ノ電鵠沼駅」よりも「江ノ島駅」のほうが近い。 そしてその江ノ電「江ノ島駅」から海岸沿いを東へ向かうと、4つ目の駅が、春山の働くGSのある「稲村ヶ崎駅」(地図C)だ。 この江ノ電こそが実は「his love」の舞台であり、主人公が登下校中に”清野さん”を密かに見つめる場所なのだ。 和希と清野さんが同じ車内に乗っていたことだってありえる。 和希の自宅の最寄駅である。 写真提供©かっしーの家 湘南海岸沿いを走る江ノ電。 後ろに江ノ島が見える。 清野さんとの思い出はこんな素敵なロケーションで作られたのですね。 (写真は、地図CとEの中間ぐらい) 写真提供:©かっしーの家 ■ 3・「ホットロード」の中心地 湘南、といえば江ノ島、と頭に思い浮かべる人も多いだろう。 江ノ島を本州と結ぶ地点”片瀬江ノ島”(地図G)は、 「ホットロード」を語る際に欠かせない、一番重要な場所。 いわば「ホットロード」の中心地といっても過言ではない。 春山たち”ナイツ”が集う場所であり、絵里と和希が放課後よく遊ぶ防波堤やアイスクリームを食べるコンビニ。 ファーストフード店、ファミリーレストラン、海岸・・・。 この場所でストーリーが展開するシーンは数え切れない。 江ノ島灯台の展望台から見る湘南。 和希と絵里が大学生に声をかけられた、 弁天橋が見える。(地図F) 写真提供:©湘南お天気相談所 また、(地図H)は「片瀬西浜」と呼ばれる地域だが、 江ノ島を挟んで東にある片瀬東浜(地図E)もホットロードで頻繁に登場する。 ”防潮堤”といわれる、砂浜にゆるやかなコンクリートの階段がつらなる場所といえばわかるだろうか。 深夜、春山がグループから離れて和希と2人きりになるために和希を連れ出した場所だ。 湘南にはいたるところにこういった防潮堤があります。 写真は片瀬東浜ではありませんが(辻堂あたり?)、 こんな場所で和希と春山は 2人きりの時間を過ごしたのでしょう 写真提供:©papasmamas.com ハルヤマに、和希が「行かないで。こんなに誰かを大事に思ったことないもん」と 弱音をはくシーン(4巻88ページ)や、 和希が、春山の居場所を探そうとリチャードやGSに電話をかけるシーンの 電話ボックス(4巻100ページ)の場所がここ。 また、ハルヤマの責任感の無さに苛立つリチャード達が、ハルヤマに暴力をふるう場所も。 ちなみに江ノ島をつなぐ橋は【弁天橋】(地図F)と呼ばれ、 夏になると「おもいっきりテレビ」のCM直前などにここの映像が入る事が多い。 実はここは、絵里と和希が放課後、大学生グループの車に乗り込み、後に危険な目に遭遇するきっかけとなるあの橋なのだ。 江の島へ向かう、弁天橋(地図F)。 この場所で、和希と絵里は大学生に声をかけられた。 (実際は写真左端の江ノ島大橋(車道)) 写真提供:©湘南お天気相談所 ところで和希と春山の家について。 和希は鵠沼海岸の海よりに建つマンションに住んでいる。(地図) 一方、春山が一人暮らしをしているアパートは海沿いにはない。(地図D)の、すこし内陸に入った場所にある。 ハルヤマは初めて和希を自宅へ送った時、海沿いのマンションを見て、「お前んち金持ち?」と聞いていた。 海が見えると見えないとではやはり家賃も違う。そんな事からもバイトの金をほとんどバイクに費やしていたハルヤマらしさが出ている。 逆にいえば、金の無い春山が海沿いのアパートに住むとは考えにくい。紡木さんはそんな所もリアルに描いている。 こう見ると、春山のアパートは、仲間の集まる片瀬江ノ島へも、稲村のバイト先へも行きやすい中間に位置している。 鵠沼あたりから見る江ノ島。(地図J) 和希のマンションから見える景色はきっとこんな感じ。 写真提供:©papasmamas.com ■ 3・漫画に登場するスポット 「ホットロード」をはじめ、紡木さんの作品には実在する場所の描写が多い。 今まで挙げただけでもかなりリアルに描かれていたことがわかるが、私がこのページを作ろうと思って頭に最初に思い浮かんだのが 作品でたびたび登場するファミリーレストランだった。 とはいえ「ホットロード」からもう15年もたつ。 海はあの頃のままの姿であろう、だが建物は、特に店などは閉店・改装などを理由に、今でもそのまま残っているものを見つけるのはおそらく難しい。 それでも、なんとか次々とその建物を見つけることができた。 改築・リニューアルをしていたとしても、今でもその土地に建っていてくれる、それだけでなんだかうれしく感じた。 ■レッドロブスター江ノ島店(地図H)。 店名を聞いて思い出す、和希の好物”エビフライ”。 「ホットロード」冒頭で母親と和希が向かう、夜のファミレス。 その時和希が言った言葉を思い出す、「ここはエビフライがないだろォっ」。 というわけで、この時向かったのはレッドロブスターではなさそうだ。 では、どこでレッドロブスターは登場するのか。 それはホットロード第二巻146ページ。 「聞いたかよっ!トオルさん引退だって?」 トオルさんの後を春山が継ぐという噂を聞きつけたリチャード達が、驚きを隠せず店に飛び込むように集まるそのファミレスの外観を、紡木さんは上空から描く。 その屋根には「Red Lobster」という文字が確かにある。 道路をはさんで目の前には湘南の海が広がる、 テラスがおしゃれなファミレス。 写真提供:©じぇ~まつ ■マクドナルド 江ノ島店(地図I) ホットロードで外観・看板がたびたび描かれているマック江ノ島店だが、店内のシーンが無いか探した。 「ホットロード」第一巻、122ページ。 放課後、和希は絵里に誘われ向かった店で、リチャードさんに声をかけられる。 「あれ この子たちどっかで見たことある あ わかったぁ ハルヤマの彼女ぉ」 今まで、このシーンはどこか海沿いのおしゃれな喫茶店だと思っていた。 だがよく見ると背景にハンバーガーのメニュー表が。今まで気付かなかった。 その店内こそ、私が高校生の夏休みに何度か行ったあの店内に良く似ていた。 店内から見える江ノ島の位置からしても、マクドナルド江ノ島店とみて間違いないだろう。 だがマック江ノ島店は改装し、現在の外観はあの頃とは変わっている。 通称”マック”。関西ではもちろん”マクド”。 実際は藤沢市鵠沼海岸1丁目にあります。 写真提供:©じぇ~まつ ■藤沢駅(地図A) 「ホットロード」の物語は、藤沢駅から始まる。 和希の最寄の駅「鵠沼海岸駅」(地図K)から小田急江ノ島線に乗ると2つ目に藤沢駅がある。 この藤沢駅には、小田急江ノ島線のほかに、前記に書いた江ノ電とJR東海道本線が通っている。 (ちなみに「ホットロード」の冒頭の1コマ目に描かれている絵は、JR東海道本線のほうの駅) 中学生の和希たちにとって、大きなデパートや駅ビルのある藤沢駅は、地元とは違った雰囲気の、背伸びしたい”街”だったのかもしれない。 藤沢駅にはもう一つ、忘れてはならない事がある。 それは「his love」の舞台であることだ。 朝の通学中の江ノ電車内。主人公や清野さんが降りる駅こそが終点・藤沢駅であり、 清野さんが寒くて雨の振る日も「羽鳥さん」を待つ、その駅も藤沢駅である。 ホットロードの冒頭で同じ景色が描かれている。 また、「his love」で主人公が清野さんと待ち合わせた場所の背景にもこの景色が描かれている。 写真提供:©かっしーの家 ■稲村の・・・ 漫画の中で”稲村のスタンド”といわれ度々登場した、春山のバイトする湾岸沿いのガソリンスタンド。 一番探したい場所はと聞かれたら、私は迷わずここを答えるだろう。 和希とハルヤマが始めて出会う場所。放課後に絵里と立ち寄った和希に、春山が缶の紅茶を手渡した場所。 絵里が和希を海水浴に誘い出し、和希とハルヤマが一つの浮き輪でじゃれあう微笑ましいシーン・・・。 場所は(地図C)。 春山が貝マークの作業着を着ている事から昭和シェル石油であることがわかる。 このGSついて、インターネットのあちこちに「実在する」という言葉を見つけた。 探した所、実際の稲村ヶ崎の”海沿い”には一件のGSが存在。 だが昭和シェル石油ではなく、そのGSが15年以上も前から建っていたのかも不明。 だがしかし、そのGSから見る景色が、あまりにも漫画の景色に酷似していることから、どうやらこのGSが過去には昭和シェル石油であったのではと思われる。 美穂子との再会、春山がくれた温かい缶の紅茶、そして絵里と和希が浮き輪を持って出かけたあの海。 写真は”鎌倉高校前駅(地図CとEの間)” 写真提供:©かっしーの家 ■ 4・ずっと。 紡木さんが湘南を愛しているということを一番実感できるものがある。 ”愛蔵版”紡木たく選集だ。 ホットロード2巻、机をステージに、みんなで卒業を歌おう、の全4冊が出版されており、 ハードカバーの上にビニールカバーまでつくその姿はまるで辞典。 そんな【愛蔵版】には漫画以外に特別に収録されているものがある。紡木さんが 撮った写真が”taku tsumugi photo gallery”として収められているのだ。 バイクやアパート、セブンイレブン、夜の道路などの写真・・・。 そしてその4冊すべてに、湘南の写真が収められている。 江ノ島の夜景、そして夕暮れの江ノ島を背景にした国道134号線・・・。 それは、紡木さんがレンズ越しに見た湘南の海。 マイホームビーチ・湘南―――。 紡木さんが愛してやまなかった海がそこにある。 (地図HからI方面を眺める) 写真提供:©かっしーの家 ■写真について 当ページに掲載している写真は、すべて承諾を頂いてお借りしたものです。 突然の無理なお願いにも快く承諾して頂きましたサイト様、本当にありがとうございました。 おかげさまで念願のページを作ることができました。 これらの写真の著作権は、すべて各写真脇のサイト名およびお名前に帰属しています。 許可を得て写真をお借りしている物であり二次使用を固くお断り申し上げます。 また、当ページの内容について各サイト様へのご質問はご迷惑をおかけする事になりますので遠慮ください。 Special Thanks!!! (写真を貸して頂いたサイト様) かっしーの家 湘南二都物語様 二都(鎌倉・藤沢)を中心に江ノ電沿線を紹介する湘南を満喫できる素敵なサイトです。 鵠沼海岸をメインに紹介する かっしーの家 藤沢館も 運営されていらっしゃいます。 湘南お天気相談所様 気象情報にまつわる、わかりやすい説明のコラムが満載。 湘南の素敵な写真と共に湘南の天気情報も。 湘南=晴れというイメージを持つ私にとって、台風の荒れた景色や湘南に降る雪景色は驚きでした。 PAPAsMAMAs.com様 その名の通り、管理人myuさんをはじめとする パパさんママさんたちが集うアウトドアサイト。 江の島~鎌倉ウォーキングページの写真を一部お借りしました。 ほかにも街を抜け出したくなるような 素敵な山の写真やキャンプ&スキーの情報など、盛りだくさんです。 <<column-index | Next Column(11)>> |